シルクロードの町

 その年の春、3月。
 シベリアから空路天山山脈を越えました。
 飛行機の窓下には雪を頂いた稜線が途切れることなく続きます。深夜のトランジットのためか、変わらぬ風景の連続に眠気を誘われたのか、うとうととしてしまいました。目が覚めて時計を見、20分も寝ていたことを知りました。それでも窓の下には、さっきと変らぬ風景が続いています。いつ途切れるかもしれない山の連続にユーラシア大陸の広大さを感じました。

 そうして着いた町がソ連ウズベク共和国の首都タシケントでした。
 タシケントは、中央アジアにあるシルクロードの要衝地です。三蔵法師の時代にも「石の町」として登場する歴史のある町です。

 シベリアの白く閉ざされた町から到着した私には、陽光に輝く春の装いの町がただまぶしく映りました。

 ホテルに入ってラジオのスイッチを入れると、豊かな声量の歌が部屋に流れました。いえ、歌とは少し違うようです。しばし聞き入ってしまいました。ロシア語ではなく、もちろん英語でもありません。何を言っているのかまったく理解できないけれど、聞く者の心を捉えて離さない魅力がありました。
 これがコーランの朗誦でしょうか。

 この町で初めてイスラム教に触れました。イスラム教の戒律は厳しいと聞いていますが、私には豊かで解放された懐の深い宗教とのイメージが刷り込まれました。

道標5
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by h_with_the_wind | 2010-05-10 23:59 | 思い出話 | Comments(0)