幸福

 幸福な家庭は皆一様に幸福であるが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である。

 ロシアの文豪レフ・トルストイの小説「アンナ・カレーニナ」の冒頭の文章です。どなたの翻訳で最初に読んだのか定かではありませんが、冒頭の文章は鮮明に記憶に残りました。今でもふとした折に頭に浮かんできます。

 友人がぽつんと
「私、幸せやねん…」と、言いました。
 一瞬、ぽかんとしてしまいました。
 彼女は、初恋をしているわけでも新婚さんというわけでもありません。しっかりもののおばちゃんです。旦那様と子供が二人のいわゆる日本のモデルケースにされるような家庭の主婦です。

 ストレートで素朴なひと言が、一瞬の後、私に届きました。思わずにっこり笑い返していました。「幸せ」に理由は必要ありません。
 一歩間違えると、反感を買うひと言かもしれません。
 荷物の内容こそ違うでしょうが、誰もが多かれ少なかれ荷物を背負っています。彼女の背中にもいろんな荷物が乗っているはずです。
 それでいて、幸福の種を大事に育てている姿が浮かびました。

 不満や過度の欲望といった不幸の種を口に出してしまうと、だんだんそれが実体を持っていくのかもしれません。不幸の種は、蒔いた途端に勝手に育っていくように思います。

 友人の「私、幸せやねん…」という唐突な言葉に「アンナ・カレーニナ」の冒頭の文章を久々に思い出しました。
 私もそう言える人でありたいな、と思いました。
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by h_with_the_wind | 2007-12-12 23:59 | わたし | Comments(0)