万里の長城

 なんだかんだ言われていてもオリンピックです。
 私たちは新婚旅行で北京と上海へ行きました。ですから今年北京でオリンピックが開かれ、二年後に上海で万博が開催されることには、多少思い入れがあります。


 万里の長城は、その存在を知った時から私にとって憧れの地でした。
 早朝、頼んでおいたタクシーで万里の長城に向かいました。いよいよ長年の夢が叶うという高揚感が爽やかな朝の空気と重なって今も印象に残っています。

 日本列島の全長よりも長い万里の長城は、僻地に行くと馬が乗り越えられない程度の土が盛られているだけだと聞きますが、私たちが行ったのは北京郊外にある整備された城壁でした。

 真っ青な空が視界いっぱいに広がっています。
 城壁の上に立つと視界が360度開け、足下の石廊は山のうねりに沿って左右に伸びています。それが南北に延びているのか東西になのか知る術もなく、遥か彼方の山並に消える姿を目で追いました。
 長城からの景色は、日本の城の天守閣からの眺めを連想させるものでした。城壁には等間隔に銃眼のようなものが穿たれ、北方遊牧民の匈奴が攻めて来た時には、たちまちその姿を捉え弓矢による攻撃を仕掛けることができたろうと思われます。

 万里の長城を歩いたのは、私たちとタクシーの運転手さんの3人だけで、他には誰もいませんでした。時には急峻ともいえる勾配をのぼり、また下り、様々な想像をしながら飽きることなく散策を続けました。
 ここは、かつて国境線でした。施政者が「ここ」と、一方的に決めた国境でした。その内と外にどれほどの違いがあるというのでしょう。連なる山の中、偉大なる長城に分たれつつもその左右には同じ種の樹木が育っています。
 空を仰ぐと一群の鳥がはるか上空を飛んでいるのが見えました。
 それまでもそれ以後も私は陸路で国境を越えた経験がありませんが、国境という見えないラインを引きたがる人間の業のようなものを感じました。


 オリンピックを平和の祭典と呼ぶのは間違いでオリンピックは政治である、と有名なスポーツライターがテレビで語っていました。
 彼は、ナチスがローマから聖火を運ぶことを名目に道路を測って整備し、戦車が通れるようにしたことを例に挙げ、モスクワやロサンゼルスのオリンピックについても触れていました。
 史上最多の国から首相や大統領が開会式に集まり、超厳戒態勢下でオリンピックが始まりました。「政治や宗教、民族を超えて」という美しい言葉の裏に「五輪外交」という言葉が散らついて仕方がありません。



 蛇足ながら、私は決してオリンピックを否定している訳ではありません。
 たとえ「五輪外交」と言われても各国の首脳が集まる機会がないよりはあった方がいいし、何より主役の選手たちが世界の頂点を目指して競い合う場所を持つこと、そしてその姿を見られることは素晴らしいことだと思っています。
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by h_with_the_wind | 2008-08-08 23:59 | 社会科 | Comments(2)
Commented by kque-sera-sera at 2008-08-12 09:35
こちらの新聞はオリンピックの開会式はただの無駄遣いだ、なんて
書いている所が多かったですが、中国側は自国の偉大さをアピール
できたと思っているようだし、それぞれの国のいろんな思惑が
入り交じっているようですね。
以前の中国は美しい空だったのですね〜。中国にいる友人が
空がいつもグレイだと言っていましたから。経済大国の中国より
私は昔の景色の美しい中国が好きです。
Commented by h_with_the_wind at 2008-08-12 23:53
☆kque-sera-seraさん
アメリカの評価、面白いですね。
日本ではせっかく時差の少ない北京で開催されるのに、アメリカ時間に合わせて試合が組まれている、とブーイングです。

今、中国の空イコールスモッグと言われていますね。
私が行った時はまだ人民服の人が多く、自転車の数に圧倒されたことを思い出しました。そう、夕日もとても綺麗でした♪