カテゴリ:本の話( 217 )

図書館の魔女 烏の伝言

 桜が満開の頃に感銘を受けた小説「図書館の魔女」。良書と出会えた高揚感も冷めないうちに続編を見つけました。
 「図書館の魔女 烏の伝言」(高田大介著 講談社文庫)。

 冒頭から意表をつかれました。
 時系列では前作の続編のようですが、全く異なる場所から始まる物語は、馴染みのない人物たちによって紡がれていきます。
 烏と醜い容貌で話す言葉も要領を得ない鳥飼の男、逃避行、戦争孤児たち。
 不可解で緊張感に満ちた世界から目が離せなくなってしまいました。
 前作では手話と指話が鍵でしたが、今回は言葉とは違った手段で意思を伝える「文字」が存在感を示します。

 読了後、小説の中に無駄な文章がなかったのだと気づいて、著者の術中にはまったことを知りました。
 どうしたらこんなに緻密な物語ができるのかと著者の力量にますます期待しています。

 解説で、書評家でありライターの豊崎由美さんは「スピンオフ作品のように思えるかもしれない」と、まるで私の気持ちを見透かしたかのように書かれています。そして、「実は一作目と次なる三作目をつなぐ渡し船のような役割を果たしている」と予言されます。
 しばらく三作目を待つ楽しみを味わいます。
^O^/
遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2017-06-05 18:58 | 本の話 | Comments(0)

図書館の魔女

 図書館の魔女(高田大介著、講談社文庫全4巻)を読みました。



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 初めて高田大介さんの小説を読みました。文章にキレがあり、選択される言葉が豊富です。
 たとえば、「韜晦(とうかい)」。普段目にしない漢字ですが、たったひと言で簡潔にかつその場面の緊迫感をも読者に伝えます。
 最近は、誰にでも理解できるようにとの配慮からか平易な文章での小説ばかりが目につき、少々物足りなく感じていたので、ぴしりと的確な一語を使われることが爽快でした。
 著者のご専門は印欧語比較文法・対照言語学だそうで、尚且つ、フランスで生活されているというのですから、言葉に対しての思いは格別かと想像します。


 小説「図書館の魔女」でもそのまま「言葉」が重要な役割を果たします。
 史上最古の図書館に暮らす少女マツリカは、古今の書物を繙き、数多の言語を操って策を巡らせるがゆえに、「高い塔の魔女」と恐れられています。
 ところが、彼女自らは声を持ちません。幾多の言語、方言、さらに手話、指話…、いくつもの種類の言語が飛び交い、その全てを聞き取り理解しますが、自らの言葉は傍にいる司書を通してのみ語られます。

 言葉は「思い」をどこまで伝え得るのかということを常に突きつけられながら、長い小説を読んでいました。
 使用する言語が同じだからといって「思い」が伝わるとは限りません。一方、言葉は通じなくても、目的が同じであれば呼吸で分かり合えることもあります。
 多くを語っても中身の空疎なこともあれば、語らずとも「忖度」が働くこともあり得ます。

 「ペンは剣よりも強し」との言葉は、古くから使われてきた表現ですが、予想される戦争を「言葉」で避けることができるのでしょうか。
 身に迫る危険をもうひとりの主人公キリヒトと共に回避することができるのでしょうか。
 先を急ぎたい思いを抑えながら小説の世界を楽しんでいました。
^O^/
遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2017-04-07 23:59 | 本の話 | Comments(0)

俗語発掘記 

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(俗語発掘記~消えたことば辞典 米川明彦著 講談社選書メチエ)


 子供の頃に聞いた単語。
 古い小説に出てきた言葉。
 私自身が使っていた流行語。
 娘から知ったことば。
 だけど、今は誰も使わなくなった俗語のオンパレードです。

 「辞典」なので、単語はあいうえお順に並んでいます。
 最初は、「アイス」。
 アイスクリームかと思ったら違いました。
 アイス→氷菓子→高利貸し。
 明治時代には「高利貸し」のことを「アイス」と呼んだそうで、金色夜叉には、「高利貸し」の漢字に「アイス」とルビがふってあるといいます。


 「メリケン粉、買うてきて」と母に頼まれれば、私は黙って「小麦粉」を買ってきたものです。
 そして、私が娘に頼む時には
「小麦粉、買うてきて」と言います。『メリケン粉』という言葉はつかいません。通じないこと、知っていますから(笑)。

 「俗語発掘記」にはありませんが、私の世代は「最新の」とか「流行の」の意味で、「ナウい」と言っていました。「オヤジ」が使いだしたので、「いま(今)い」に変化しましたっけ。
 娘の世代は「学校ナウ」なんて使い方をして、自分が今いる場所を連絡してきます(した? もう死語?)。
 私が生きている間にも言葉はどんどん変化したり、生まれたり、死語になっています。

 先にも書いたとおり50音順なので、項目が変わると時代を行き来します。
 時に戸惑いましたが、3世代に亘って楽しめることでしょう。
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう


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by H_with_the_wind | 2017-02-23 23:59 | 本の話 | Comments(0)

読書の醍醐味

 「炎路を行く者」(上橋菜穂子著 新潮文庫)を一日で読みました。
 「満州国演義」(船戸与一著 文春文庫)全9巻を読了するのに半年かかりました。

 一気に読みたい小説と、ゆっくり咀嚼したい小説。
 早く先が知りたいのだけど、「今日はここまでにしておこう」という「勿体ない」小説もあります。
 この違いって何なんでしょうね。
 どれも私の楽しみであり、それぞれに深く味わっているつもりです。


 歴史小説や社会派の小説は、時折、検索して確認作業を行います。決して面倒ではなく、それもまた私にとっての楽しみです。
 さすがに読書体験の初期の頃のように漢字の読みや言葉の意味を辞書でひくことはなくなりましたが(それでも「書く」時には今でも「検索」のお世話になります)。

 ドストエフスキーの小説を読むときには、ペテルブルグの地図を傍らにおいていました。
 歴史小説には、高校生の使う図録が手離せません。


 ただ、私の最大の欠点は、そうやって楽しんだ小説もそこで調べたこともすぐに忘れてしまうことです。
 この欠点がなければ、「スゴイ」人になれたかもしれません(笑)。
^O^/
遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2017-02-21 21:37 | 本の話 | Comments(0)

ささやかな心がけ

 毎朝、「とと姉ちゃん」を見て、爽やかな一日をスタートさせています。

 「とと姉ちゃん」の主人公・小橋常子のモデルは、「暮らしの手帖」とその出版元「暮らしの手帖社」を創業した大橋鎭子さんだと聞いていました。
 そうなんだ…、とさして気にも止めていませんでした。
 私たちの母親世代に人気の雑誌でしたが、我が家で見た記憶がなかったからかもしれません。


 常子は、卒業式の日、恩師から「ささやかな心がけ」という言葉を聞きます。
 恩師は、雑誌「青鞜」に百貨店の包装紙で手作りしたカバーかけていました。
「ささやかな心がけです。
 ささやかな心がけは、小さな幸せを生みます。
 そんな瞬間を大事にしていく人でありたいと思います」と、恩師は言います。
 恩師の言葉に、お下がりの筆箱を使っている妹のために端切れを利用して飾りを作ってくれた祖母が重なって、常子は深い感銘を受けます。


 それを見て、「ささやかな心がけ」がいっぱい詰まったエッセイ集を思い出しました。

 「すてきなあなたに」。
 著者は、大橋鎭子さんです。


 大学を卒業する日、地元に帰る私に「すてきなあなたに」を贈ってくださった先輩が浮かびました。
 年賀状の交換ばかりで、もう何十年もお会いしていません。
 お手紙を書いてみましょうか。
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2016-05-26 23:59 | 本の話 | Comments(0)

ノートルダム・ド・パリ 

 20代の頃から探していた本があります。
 「ノートルダム・ド・パリ」。

 ドストエフスキーは、「作家の日記」でシェークスピアやゲーテについて述べ、ビクトル・ユゴーの「ノートルダム・ド・パリ」を絶賛しています。
 それまで児童書の「ノートルダムのせむし男」しか読んだ記憶のなかった私は、再読したいと探しました。
 ですが、この時すでに文庫本は絶版でした。
 折に触れ、そのことを思い出していました。
 4年前、インターネットで全集に収録された高価な本があると知りました。買う直前までいったのだけど、タイミングを逃していました。

 それが良かったのかどうか…(笑)、
 『今月の岩波文庫』に入っていました!

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 こういうことってあるのですね!
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2016-05-24 23:59 | 本の話 | Comments(0)

海峡の鎮魂歌(レクイエム)

 函館を舞台にした小説「海峡の鎮魂歌(レクイエム)」(熊谷達也著 新潮文庫)を読みました。
 岩手県種市で生まれた泊敬介の父は、息子が2歳の時に家族と共に函館に渡り故郷で取得した技術を活かして潜水夫として働きます。
 成長した敬介は、父の下で潜水の技術を学び共に働くようになりますが、潜水夫としての自覚が芽生えた頃、父が亡くなります。敬介は、父が残した船や潜水器具と一緒に潜水組を引き継ぎます。
 5年後の昭和9年、函館を大火が襲います。妻子と母を探し歩く敬介もまた九死に一生を得ます。
 さらに昭和20年の空襲、昭和29年の洞爺丸沈没が敬介を襲います。

 実際に函館であった3度の災いを作者は、残酷なほど生々しく描写しますが、同時に人間は逞しいものだと訴えてきます。
 失った者への悔恨と慟哭の中、支え合える人との出会いが敬介に生きる希望の火を灯してくれます。支えているつもりが支えられている、時を重ねて強くなる人と人の絆に胸が熱くなりました。
 潜水夫として海と共に生き、海のことを知り尽くした敬介の過酷な人生にどうぞ心穏やかな日がやってくるようにと願いながら読み進みました。
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう


ネタバレかも…
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by H_with_the_wind | 2016-03-31 21:51 | 本の話 | Comments(2)

風の遺産 

 山に憧れていた時期があります。
 井上靖さんの「氷壁」や新田次郎さんの「槍ヶ岳開山」「八甲田山死の彷徨」短編集「山が見ていた」を読んでいた頃です。
 結局、本格的な登山とは無縁の生活を送って今に至っています。

 書店の新刊コーナーで新田次郎さんの名前を見つけました。風の遺産 新装版(講談社文庫)。古い友達に出会ったようで懐かしくなりました。

 風の遺産は、1961年から1年間「婦人生活」に連載され、1978年に再販されています。再販にあたって、生活様式も山の装備も山小屋も随分変わったが、山と人間の考え方にそう大きな変革があったとは思われない、と著者はあとがきで書いています。

 それからさらに40年近い月日が流れ、新装版が出ました。
 生活様式は随分変わりました。山の装備と山小屋の様子のことは私にはわかりませんが、きっとこちらも格段に進化したことと思います。
 そして、良くも悪しくも人間はやっぱり変わらないものですね。


 この小説が書かれたのは、著者が50歳頃で、小説の主人公たちは、新田次郎さんの子供世代にあたるかと思います。

 青春時代を戦時下で過ごした著者にとって、溌剌と生きる若者たちの姿が眩しく羨ましく思われたのではないでしょうか。
 戦争が終わって新しい価値観を手に入れた若者たちは自由です。
 女性は社会に出て働き、結婚してアパートで二人だけで暮らす生活を手に入れ、休日には登山やスキーに出かけます。

 一方で、苦い思いがあったことも散見できます。

 立っている人はなかったが、新聞紙を床の上に敷いて座っている登山者のために車内は足の踏み場もなかった。彼等はわがままだった。席の奪い合いを演ずる時もそうだったが、落ち着いてからも彼等は自己の領域に他人の侵入することを極度に警戒した。他のパーティーとの間に、ルックザックやサブザックのとりでをかまえて、自らのねぐらを守ろうとする者もいた。
 他のパーティーにはきわめて不親切な男も自分たちの仲間、特にその相手が女性の場合は、行き届いたサービスをおしまなかった。

(風の遺産・新装版 新田次郎著 講談社文庫より)



 日本人の身内意識あるいは島国根性を指摘されたようで、思わず自身を振り返りました。
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2016-02-26 19:01 | 本の話 | Comments(2)

小説「眺望絶佳」 

 スカイツリーから東京タワーへの手紙から始まる中島京子さんの短編集「眺望絶佳」(角川文庫)を読みました。


 生まれたばかりのスカイツリーは、独り立ちする直前に起こった震撼がフラッシュバックとして蘇ることがあり、これから独りで立っていけるのかと不安を抱いています。その一方で、街の眺望を楽しむ余裕もできてきました。これから「何を見るのか」「何を好きになるのか」と期待に胸を膨らませてもいます。

 スカイツリーからの返信の前に8編の短編が挿入されています。
 東京を舞台に描かれるエピソードは、どれも絶妙のバランスで「日常」を保っています。作者の優しい筆運びの奥に秘められた毒がピリリと効いていて小気味良く感じました。

 50歳を過ぎた東京タワーは、若いスカイツリーへ「懐かしくて」「うらやましくて」「ほほえまし」かったと返信します。
 東京タワーは、この世に「絶対」はない、ということを知ってしまいました。自ら体験した天変地異、公害、街の変化、そして映像を衛星中継することで知ったテロ。ニューヨークのツインタワーが崩れていく姿に、自分が永遠に立ってはいられないかもしれないと悟りました。
 それでも東京タワーはスカイツリーに
「私たちの仕事は立っていることだ」と言い切ります。

 東京タワーの決意宣言は、不確かな世に生きる私たちだけどしっかりと立っていなさい、と言い渡されたように読み取れました。
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2016-02-22 21:26 | 本の話 | Comments(0)

獣の奏者

 上橋菜穂子さんが、2015年本屋大賞を受賞された「鹿の王」が気になっています。文庫になるのを待っています。
 それでいて待ちきれず、上橋菜穂子さんの既刊本「獣の奏者(Ⅰ~Ⅳ、外伝)」(講談社文庫)を読みました。
 日頃は、ファンタジー小説と無縁の私ですが、夢中になってしまいました。
 こんなお話が書ける人になりたかったなあ、と憧れの気持ちさえ抱きながら読みました。


 紙と車輪は発明されていたけれど、ロウソクと薪でエネルギーを得ていた時代。
 王獣をシンボルとする真王を、大公が闘蛇軍を率いて守護しているリョザ神王国。

 リョザ神王国の闘蛇村で母と暮らす少女エリンは、闘蛇を死なせた罪に問われた母を失います。自らも命の危険に晒されたエリンでしたが、蜂飼いのジョウンに救われて成長し、やがて獣の医術師を目指すようになります。
 疑問に思ったことを納得するまで調べ、母の教えやジョウンとの生活で経験したことを活かし、更に思考を加えて実証していくエリンは、やがて凛としたひとりの女性へと成長していきます。

 架空の世界ではあるけれど、正確な知識によって裏付けされた作品は、植物、動物、医療、習慣、さまざまな分野において作者の丁寧な調査が必要だったことと想像します。
 精緻な描写は私をリョザ神王国へと運び、人の気持ちを大切にする作者の手によってより豊かに広がっていきました。
^O^/

遊びに来てくださって、ありがとう

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by H_with_the_wind | 2016-01-22 21:31 | 本の話 | Comments(0)


今日はどんな風が吹くのだろう。 日々の思いを書き留める雑文帳。


by 風懐

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