『照柿』

 『照柿』(高村薫著 講談社文庫)を読みました。

 まるでジクソーパズルを仕上げていくようでした。ばらばらだった欠片を繋いでいって、どうしても埋まらずに後回しにしていた欠片…。『照柿』は、読み終わる頃には、全ての欠片がすっきりと納まっていました。
 納まりはしましたが、出来上がったジクソーパズルは、私が読書を進めながら予想していたものとは違った絵柄でした。

 『照柿』の解説は、ロシア文学者の沼野充義さんが書かれています。
 解説の冒頭から、
 高村薫は現代日本のドストエフスキーである。今回、文庫版のために書き直された『照柿』を読んで、その思いを強くした(照柿 講談社文庫 解説より)。
 と、あります。
 そう、これほどはっきりとドストエフスキーの影を感じた小説はありません。もっとも、沼野充義さんは解説の中で、当時高村薫さんを担当していた編集者の「ドストエフスキーの『罪と罰』のような作品を書いて欲しい」というリクエストに応えた作品が『照柿』だった、と記されていますから、当然のことなのかもしれませんが。

 帝政末期のロシアの混沌と、あらゆる信頼が薄れて行く現代日本の不安定な空気には通じるものがあるのかもしれません。ドストエフスキーの小説は『信仰』によって救いを与えられますが、『照柿』のこのどうしようもない展開を読者はどう咀嚼していけばいいのでしょう。両者の違いは、そのままドストエフスキーの生きた19世紀のペテルブルグと高村薫さんが見つめた現代日本の姿を写し出しているのでしょうか。

 『罪と罰』のような作品をとリクエストされて書かれた小説をドストエフスキーの影を感じながら読んだ私は、まさに作者の術中に陥ってしまいました。
  

蛇足(もしよろしければ…)
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# by h_with_the_wind | 2008-10-23 23:59 | 本の話 | Comments(6)

『照柿』。その前に…

 高村薫さんの「照柿」を読みました。

 私は本を読んで思ったこと、心に引っ掛かった個所についてこのブログで取り上げています。
 ブログを続けるにあたって、できるだけ否定的なことは書かないように気をつけていますので、必ずしも読んだ本のすべてを取り上げているわけではありません。その他に取り上げなかった本には、何かを書くには私の手に余った小説があります。
 つい最近も高村薫さんの小説「マークスの山」を読み終えましたが、後者の理由から感想が書けませんでした。

 高村薫さんの小説と出会ったのは、もう10数年も前になります。女性にしては珍しく骨太で社会派の「黄金を抱いて翔べ」を読んで、非常な衝撃を受けました。当時、娘たちがまだ幼くてじっくりと小説と向き合える状態でなかった私は、もっと読んでみたいと思いながらも高村薫さんの他の小説を読むことを封印していまいました。

 ようやく、私が大切に『とり置き』の引き出しに入れていた高村薫さんと向き合える体勢が整ったようです。
 『マークスの山』と『照柿』を続けて読みました。
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# by h_with_the_wind | 2008-10-22 23:59 | 本の話 | Comments(0)


今日はどんな風が吹くのだろう。 日々の思いを書き留める雑文帳。


by 風懐

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